書評

【書評】下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス

池井戸 潤 小学館 2018-09-28
売り上げランキング : 1005

by ヨメレバ

 

目次

主人公は人の痛みのわかる社長

本シリーズの主人公は佃航平

佃製作所の社長です。もともとはロケット開発の研究員でしたが、あることがきっかけで辞職し、佃製作所の二代目社長になっています。人の痛みまでもわかる社長、こういう社長が下町企業の社長なのかなと感じさせます。

帝国重工の部長 財前道生

帝国重工宇宙航空部の部長から宇宙企画推進グループ部長へと異動になっています。大企業の部長でありながら、佃製作所の技術水準の高さに感銘し佃製作所と一緒に製品の開発をしていくことを決断。社内からの反対にもめげず、製品開発に奮闘する熱い人です。

天才エンジニア 島津裕

帝国重工の技術者から退職後、ギアゴーストを立ち上げてます。そのギアゴーストも追われ、大学でアルバイトした後、佃航平から誘われ佃製作所に入ります。

物語はゴースト編から続きます

このヤタガラス編は前作のゴースト編から続きます。ゴースト編では危機の中にあったギアゴーストを佃製作所が助けます。ところが、そのギアゴーストが手のひらを返したように佃製作所を裏切ります。一方、帝国重工では財前道生が異動となり、宇宙から農業へ舞台を変えます。

下町ロケットの世界観は「中小企業の社員の葛藤と希望」

下町ロケットでは、タイトルにある下町の中小企業のドラマです。そこには大企業では味わえないものがあると思っています(私自身が大企業出身なので中小企業のことがわかりません)。その中小企業は大企業が壁となってぶつかります。中小企業と大企業の対決、中小企業同志のタッグ、そこにある葛藤や希望が下町ロケットの世界観ではないでしょうか。

テーマは「仇を恩で報いる」

本書のテーマは「仇を恩で報いる」ではないかなと思っています。そして、サブタイトルになっている「ヤタガラス」は佃航平。ヤタガラスがどういう意味で、最後まで読むとこの意味がわかったいただけると思います。

ヤタガラスは、『東征を決意したものの、険しく道を阻む熊野越えに難渋していた神大和磐余彦尊を助けるため、天照大神が差し向けたとされる「神の遣い」』と本書に書かれています。

佃航平がこの「神の遣い」として最後にあらわれます。前作のゴースト編から裏切りにあってきたにもかかわらずです。そして、帝国重工も企業として何が必要なのかを考え、それまでのことを水に流します。殿村直弘の父も。

本当に大切なことは何なのか、それを考えたとき仇討ちより大切なことがある、それを教えくれる物語でした。

下町ロケット ヤタガラス

池井戸 潤 小学館 2018-09-28
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