書評

究極の独学術|世界の情報と対話するための1冊

本書の中にカードの利用について触れられていたので、興味が沸きました。

本書を読んでほしい方

独学の仕方について知りたい方。
独学で世界の情報と対話したい方。

著者の紹介

瀬木比呂志

1954年名古屋市生まれ。東大法学部在学中に司法試験に合格。1979年以降裁判官として東京地裁、最高裁等に勤務。2012年明治大学教授に転身、専門は民事訴訟法・法社会学。在米研究2回。芸術諸分野、リベラルアーツについては専門分野に準じて詳しい。
著書:リベラルアーツの学び方 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

構成

本書は以下のような構成になっています。

第1章 独学が必要な理由
第2章 情報の海をいかに泳ぐべきか?
第3章 書物や作品を「読む」技術の基本
第4章 書物や作品から、内容・方法・思想・発想を学ぶ
第5章 実務・人・世界から学ぶ
第6章 パースペクティブ・ヴィジョン獲得のための方法・技術

要約

ここ数年、読書術や独学術の書籍が多数発売されています。中でも「独学大全」は独学というものを一躍有名にさせてくれた一冊と言って良いと思います。本書は単なる独学の技術というより何のために独学をするのかを問う一冊です。それは本書のサブタイトルにもあるように「世界のすべての情報と対話し学ぶための技術」です。前書「リベラルアーツの学び方」を読んで参考になった方は、本書も手に取って良いのではないでしょうか。

中でも興味深かった3点について、以下に示していきたいと思います。

ポイント1 自らの拠点

筆者は、情報の海を泳ぐには、物理的にも精神的にも「自分の拠点」を確保しておくことが必要だと言っています。自分なりの場所を物理的にも精神的にも確保しておくことで世界を理解することができるというのです。これは「自己の確立」につながる考え方なのですね。「自己」が確立しているから、そこから別の世界に泳ぎ出す。そして戻ってきて考え直す。そのようなことを言われているのだろうと思いました。

もうひとつ物理的という面では、書斎の話が出てきます。今の時代に書斎を持つことなど一般人には不可能と言わざるを得ない話だと思いますが、筆者は小さくても良いから自分の空間を持つことを薦めています。そこに独学に必要な情報を置いておく、そこを拠点にすることで何かあればそこに立ち返るという意味で捉えました。私には一応書斎らしき場所があります。ただ、何かあれば立ち返る場所になっているかというとそうでもありません。情報が整理されていないのですね。そのためにも積ん読を減らす努力をしているのですが。

ポイント2 筆者の考える「対話」の記録

筆者は、書物や作品と「対話」を行なったら記録を残して置くことが非常に重要だと示しています。それをすることによって鮮明に記憶に定着されるようになることを指摘しています。

筆者は書物について要約等のカードを作ったそうですが、数年でやめてしまったそうです。その理由がのちに利用する機会が限られるからだそうです。これ私も感じたことです。カードに書いても後から利用しずらいというのが改めて感じていたところです。それよりも電子的文書として残す方が検索性が良いです。その辺りからもカードは微妙だなと改めて感じました。手書きをすることには一定のメリットがあるようですから、手書きとタイプ打ちの併用が良いように思います。

ポイント3 独学を人生にどう活かすか

独学の目的は人それぞれあるでしょう。会社での地位を上げるために必要な勉強だったり、必要な資格を取得するための独学というものもあると思います。筆者はそれを否定していませんが、筆者自身の気持ちとして、地位、財産、名声等の世俗的な成功だけではむなしいと言っています。

では筆者はどうしたのか。筆者は独学を自己目的とすることなく「その成果をかたちあるものにしてみずからの人生に生かすこと」に努めてきたと言っています。そのためにしていることがアウトプットです。書物等によるインプットをし、アウトプットをすることで、読者との「対話」を行おうとしています。

その上で、自分にしかできない、代替性のないことを成し遂げて、自分の疑問も決着をつける。これに打ち込まれてきたように思います。この活動により社会に貢献していくことを望まれているのだと思いました。それが以下の文章に表れていると感じました。

①新しい工夫によってみずからの仕事の仕方を合理化する、②その仕事の中で、個人の創造性や生産性が生きる余地を伸ばす、また、③仕事を離れた部分でも、みずからの価値の追求、職場とは離れたコミュニティーとの交流を図って、自己の人生をより充実させるとともに、その創造性を社会のためにも生かす p.397

まとめ

本書を読んでいるとパースペクティブという言葉がよく出てきました。「perspective」をGoogle翻訳で訳すと「視点」と出てきます。筆者は芸術や自然科学も取り込んだリベラルアーツによりそれらのさらに外側にある広い世界につながっていくとプロローグで示しています。そういった視点をもち、自分なりの学びの体系を持つことが筆者の独学術の行き先なのではないかと思いました。