著者の本を以前読んだことがあり、とても参考になりました。
本書でもどれだけ役立つか期待して読むことにしました。
目次
本書を読んでほしい方
行き詰まりを感じ、これからの時代に求められるのはどんな能力なのかを知りたい人。
著者の紹介
ちきりん
関西出身。バブル期に証券会社に就職。その後、米国の大学院留学、外資系企業勤務を経て、2011年から文筆活動開始。
ブログ:Chikirinの日記

構成
本書は以下のような構成になっています。
1 市場と価値とマーケット感覚
2 市場化する社会
3 マーケット感覚で変わる世の中の見え方
4 すべては「価値」から始まる
5 マーケット感覚を鍛える5つの方法
終 変わらなければ替えられる
要約
著者の『自分のアタマで考えよう』では、論理的に考えることを薦めていました。
ひとつひとつ、論理的に考えていくことで思考を深めていくことができます。しかし、世の中は常に論理的に動いているわけではありません。
そこで役に立つのが「マーケット感覚」というわけです。
「マーケット感覚」とは、本書では『顧客が、市場で価値を取引する場面を、直感的に思い浮かべられる能力』としています。
論理思考とマーケット感覚を身につけることで、新たな市場を見つけていこうとするのが本書の狙いです。
ポイント1
本書でいう「マーケット感覚」とは、先にも書きましたように『顧客が、市場で価値を取り引きする場面を、直感的に思い浮かべられる能力』としています。
では、マーケットとは何か?
本書では以下のように説明しています。
不特定多数の買い手(需要者)と不特定多数の売り手(供給者)が、
お互いのニーズを充してくれる相手とマッチングされ、
価値を交換する場所 p.16
ここにも「価値」という言葉が出てきます。
この価値に注目し、市場で取引されている価値は何なのか?
この面に着目して何を売り手と買い手で交換しているのかを思い浮かべられる能力をマーケット感覚と言っています。
ポイント2
では、「価値」を見つけることは論理思考ではできないのでしょうか。
これに対する答えとして、本書では以下のように説明しています。
「市場で取引される価値を論理的に分解すること」ができれば、論理思考だけでも相当に深いところまで発想を掘り下げることができます。 p.27
ただ、論理思考では、概念的・抽象的なものを対象にして分解するとなると難しくなる。
そして、世の中は論理だけで動いているわけではない。
抽象的なことにも対応する能力としてマーケット感覚の重要性を説いています。
ポイント3
本書では、マーケット感覚を身につけるための方法として5つ挙げています。
1.プライシング能力を身につける
ここでいうプライシング能力とは、需要者側から見た値付けのことです。
従来は供給者がコストや利益等を加味にしながら、値付けしていました。
そうではなく、需要者が「価値を判断するための自分独自の基準」を持ち、それに合わせて価格を設定していくのが市場での価格設定だとしています。
2.インセンティブシステムを理解する
プライシング能力の次に大切なのがインセンティブシステムとしています。
需要者が値付けをする。その値付けをするには、それなりの理由があります。
その理由を理解していくことが必要なのです。
そのために、自分の欲望に素直になることを挙げているのは興味深いです。
自分の欲望に素直になることで、他者の欲望や人間全体に共通するインセンティブシステムについても理解が深ると著者は考えています。
3.市場に評価される方法を学ぶ
3つ目の方法として、市場に評価される方法を学ぶことを説いています。
従来のような組織での意思決定は属人的であり、あくまでも上司?に評価されるようなやり方です。
これは市場での評価とはいえません。
そこで大切なのが「とりあえずやってみる」という考え方。
とりあえず小さくやってみて市場に出して、どのような評価を得られるか。
それをみることが大切だとしています。
そのためにはフットワークが軽くなくてはならない。
ダメなら他のことをしてみる。
市場の評価をみるためにには、そういう行動力と迅速な意思決定が必要なのです。
4.失敗と成功の関係を理解する
「とりあえずやってみる」という考え方で行動していくと、そこには失敗はつきものです。
失敗の積み重ねの先に成功があるのかもしれません。
本書では、以下のように書かれています。
チャレンジの結果が成功と失敗に分かれるのではなく、失敗とはスタート地点から成功までの途上に存在する学びの機会なのです。 p.200
これは決して失敗に寛容というわけではなく、失敗の分だけ熟考されたと考えらているのだと思います。
市場に出すことによって、市場からフィードバックをもらう。
そのフィードバックを次に活かす。
そうやった考え抜かれた末の成功が市場での成功といえるのかもしれません。
5.市場性の高い環境に身を置く
市場性の高い環境については本書の例を参考にすると良いと思います。
市場性の高い環境 | 市場性の低い環境 |
---|---|
コンビニやスーパーマーケット | 大企業の管理部門や研究部門 |
ベンチャー企業やラーメン屋などの自営業 | 大企業 |
外資系企業 | 日本企業 |
ブログとTwitter | FacebookとLINE |
私が今置かれている環境では最後の例が参考になります。
Facebookは友達など限られた範囲の繋がりです。
一方、Twitterは不特定多数の人との関係、興味なければ見向きもされない繋がりです。
これが市場性が高い環境なのだと感じました。
まとめ
本書ではマーケット感覚という言葉で説明されていますが、最近では直感という言葉が使われています。
勝手な解釈ですが、マーケット感覚と直感は同じ意味なのかなと思いました。
ここではマーケット感覚で通しますがマーケット感覚と論理思考、どちらが重要というものではありません。
どちらも重要であって両方の能力を身につけることでより高い思考力が身につけられるのだと感じました。